『森の旋律』を終えて

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤さんの作品と出会ってから約3年。tokioriでの企画展が実現しました。
初めて見た時に印象に残った曲線の美しさや縁の薄さ、“器”でありながら作品自体が放つ独特な佇まいに惹かれてお声がけしました。

安藤萌 個展『森の旋律』

さまざまな樹種、ウメやリンゴ、カキなどといった器にはめずらしい木を使ったり、通常ならば避けられる木の節や枝分かれした部分の扱いにくい部位でさえも活かす安藤さんの作風に興味を持ってくださった方がたくさんいらっしゃいました。

「この器は木の状態の時はこの向きで生えていて…」とか、「ここの色が違うのは枝分かれしていた部分で…」とか、「木目がこうなっているのはこういう向きで削り出していったから…」とか、安藤さんの製作過程のお話もとても興味深いものばかり。形が完成してしまうと見えない部分の話を聞けるのは、作家さんが在廊してくださるからこそのたのしみです。

安藤萌 個展『森の旋律』

生木の状態で形を作り、そこからの乾燥過程で自然にうまれる歪みを活かすという、まさに木の個性が宿る一点もの。同じようなサイズでも見比べてみると、波打つような曲線も木目も横から見たフォルムも違う。何度も何度も見比べて時間をかけて選んでくださる姿に、私も心の底から「わかるわかる!」と何度も呟きました。

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

うるしの器も手に取る方が多く、お抹茶用に花器にと、想像を巡らせながら選んでいかれました。

安藤萌 個展『森の旋律』

そして、器よりもさらに薄く削られたランプシェードからは、木目の表情が生き生きと映し出されます。

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

新作のひとつだった木の壁掛け。1点しかなかったのですが、存在感がありました。

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

そして、外からひと続きになるように設えた石(コンクリートの一部)の山。自然に溶け込むような一角には野性味を残した作品を。安藤さん曰く、こういう作品は、木自体との出会いと自分の中の想像力が掻き立てられた時にしかうまれてこないそう。一点一点の力強さを感じました。こちらは鉢カバーやオブジェにと用途はさまざま。

安藤萌 個展『森の旋律』

実用的なものからオブジェまで、それを使う人の想像力や感性によってどんどんイメージが膨らみます。中に何かを入れずとも、そのフォルム自体をたのしむことができるのも魅力のひとつ。自然の力に委ねながらうまれてきた作品だからこそ、人を癒し穏やかな気持ちにさせてくれる力があるような気がします。森の中の景色を見ている感覚に近いでしょうか。

寒い中、tokioriに足を運んでいただいたみなさま、また、気にかけてくださったみなさまありがとうございました。
安藤さんの工房兼ギャラリーは上田別所温泉近くにあります。これから冬季休業に入るようですが、あたたかくなったらぜひ訪ねてみてください。
https://www.morino-utsuwaya.com/

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』
今回の展示で石の展示台をつくるにあたり、善光寺門前 Gallery MAZEKOZEを企画運営するRIKI-TRIVAL(リキトライバル)の小池さんにご協力いただきました。「石とか自然に近い素材を展示に使いたいのですが…」という私のざっくりとしたイメージにもかかわらず、親身に相談に乗っていただきました。安藤さんがつくる自然の姿に近い味わいを残した力強い作品と調和し、展示の可能性を広げてくださいました。本当にありがとうございます!

その他、什器の一部は古道具 そらしまさんでお借りしました。

写真は毎度ながら、ズズサウルスの木下さんにもご協力いただいています。

今回も、たくさんの方にお力添えいただき感謝いたします。