10月26日(土)
『Fall in herb, Fall in spice』の記録です。
少々長くなりますが、よろしければお付き合いください。
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I部:サロン・ド・テ ー 焼き菓子皿と紅茶
時間:14:30-16:30
林檎畑の木の下をイメージしたテーブルで仕上げるのは、『ノルマンディ風の林檎のタルト』。生地にはナツメグ、林檎にはカルヴァドスと黒胡椒、参加してくださったみなさまと同じテーブルで会話をしながら、Hikaruさんが仕上げていきます。
箸の代わりに使っているのはローリエの茎。オーブンに入れてタルトと一緒に焼き上げると、だんだんと空間に広がるローリエの香り。
スパイスとハーブの香りに包まれながら、紅茶の準備にとりかかります。
『遠い街』をイメージしたオリジナルブレンドの紅茶をご用意いただきました。調香する素材ひとつひとつの香りをみんなで確かめながら、利きハーブ&スパイスの時間も。カルダモンやジンジャー、シナモン、オレンジピールなどに1ヶ月前に摘んでおいたという金木犀の花を加えて。力強いスパイスの奥にふわっと感じる華やかさが個性的でした。フランスに思いを馳せたり、金木犀が咲く頃を思い出す『遠い街』。Hikaruさんの詩的な世界に引き込まれました。
クリームと林檎を浸しておいたカルヴァドスを一煮立ちさせて、あつあつに焼きあがったタルトの真ん中に流し込んだら切り分け、生クリームをのせていただきます。
6名様のご参加をいただき、着席にてじっくり味わう林檎のタルトとオリジナルブレンドの紅茶。メモをとったり、Hikaruさんとの会話を楽しんだりしながら穏やかな時間を過ごしていただきました。
最後には、林檎の収穫をして。
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II部:アペロ – フランス惣菜とノンアルコールカクテル
時間:19:00-21:00
テーブルの設えを変えて、12名様立食にてお迎えしたⅡ部の『アペロ』。キャンドルを灯し、雰囲気ががらりと変わります。アペロとは、フランスの食文化で、アルコールとおつまみで過ごす夕食前のリラックスタイム。
(余談ですが、フランスでは夕食の時間は20時くらいからが一般的だそうです。アペロの時間を過ごしてから、夕食を愉しむという美食大国らしい習慣だなぁと思いました。実際フランスに行った時に、深夜でもレストランは賑わっているところが多かったです。)
今回はHikaruさんの旦那さま、羽深さんにノンアルコールカクテルでご用意いただきました。初めはハーブやスパイス、果実を漬け込んだシロップを使ったビアカクテルから。
その間にHikaruさんがtokioriのキッチンで、フランスのお惣菜を仕上げていきます。香ばしいパスティラはフレッシュミントと共に。新鮮なお野菜を使ったオードブルを味わいながら、テーブルの上のオーガニックハーブや、スパイスのテイスティングセットをきっかけに、みなさまには思い思いの時間を過ごしていただきました。
最後はなんと卵黄(?!)を使ったデザートカクテル。ミントを添えてすっきりと。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
ハーブとスパイスをテーマに過ごしたふたつの時間。
どちらも厳選された素材を使い、その時間にベストの状態で仕上げられたHikaruさんのお菓子やお惣菜は、シンプルさの中に垣間見える個性を感じ、忘れられない記憶として今も残っています。羽深さんの美しい所作、ユニークで味覚をくすぐるカクテル、セレクトしていただいたBGMも今回の空間になくてはならない存在でした。おふたりから感じる研ぎ澄まされた感覚に緊張感を覚えつつ、素材選びへのこだわりや、食に対する探究心、食べてもらう人への配慮など、とても多くのことを学ばせていただきました。
そして何より、参加してくださったみなさまが、それぞれの愉しみ方でこの時間を完成させてくださったのだと思います。
ありがとうございました。
月に一度、ナノグラフィカでHikaruさんの料理教室『旅するような料理教室店』が開催されています。私が初めてHikaruさんと出会った場所です。
興味のある方はぜひ参加してみてください。
→スケジュールはこちらから
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プロフィール
料理家 Hikaru
2016年長野に移住。シンプルな暮らし、食のありかたを見つめ、
家庭で楽しめるような素材をいかした料理、季節の手仕事などを提案する。
雑誌、広告、書籍への寄稿、食にまつわるコーディネートやスタイリング、
レシピ制作など活動は多岐にわたる。
instagram @hikhaboucca
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ここからは、少し話が脱線しますが、ご興味あれば読み進めてくださいませ。
当日メニューと一緒にじゃばら折の小さな本をお配りしました。I部とⅡ部、それぞれの時間に登場したハーブ&スパイスの一部を描き入れてあります。表紙には、裏面に入れた『くらしのヒント』に登場するものから。
I部(上段)ジンジャー、クローブ、黒胡椒
II部(下段)マスタード、マジョラム、カモミール
個人的に、ハーブやスパイスは小瓶や小分けの袋になっているものを目にする機会が多く、植物としてどんな風に存在しているのか疑問でした。今回、Hikaruさんがテーマにあげてくださったことをきっかけに、図鑑を見たりネットで調べたりしながらイラストを描いたのですが、とても興味深かったです。
本繋がりで、もうひとつ。
当日見ていただいた、フランスから買ってきたレシピ本。文字だけで記され、しつけ糸のような綴じ、ページの上部と下部つながったままのところが…… 独特な製本のスタイルにさまざまな憶測が飛び交いました。
切り忘れた、立ち読み防止、とじてある紐を切って一枚に広げて見る、自分で袋とじ(?)を切るような楽しみを……想像を巡らせたのですが、解決せぬまま。
後日、Hikaruさんから「思い出した!」と連絡が。
『ルリユール』というヨーロッパの伝統的な装丁技術だそうです。この場合は、食材ごとに仮止めされた状態の1冊1冊を自分好みにセレクトして、最終的にきちんと合わせて製本する、ということでしょうか。珍しい仕組みになんだかワクワクします。何気なく手に取った本から新しい世界を知ることができました。興味のある方は『ルリユール』で検索してみてくださいね。
最後に、当日の様子を記録してくれた木下さん、
素敵な写真をたくさんありがとうございました。