tokiori企画 十六 『dia-logos』を終えて

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六
美術家 ごとう なみ 個展『dia-logos』

入り口のハニーサックルが見頃を迎え、穏やかで心地の良い風が吹く10日間でした。

今までなみさんの絵を拝見したり、アトリエにおじゃましたりしていた中で、なみさんが制作する作品のジャンルや知識の深さ、手法がとても興味深く、何かご一緒できないかとお声がけさせていただきました。

普段は油絵の抽象画を多く描かれていますが、tokioriは大きな絵を掛けられる壁の耐性がないことや、スペースにも限りがあることから展示内容を工夫しなければなりませんでした。なみさんにもそのことをお伝えしつつ、ご快諾いただけたことにとても感謝しています。

そして、ご提案いただいたのは普段描いてる抽象画を分解して、その構造を展示するというインスタレーションでした。今まで経験したことのない絵の見方!

サンプルを作っていただいてシミュレーションしてみると、手法はまったく違うのにふだんなみさんが描く抽象画を観ているような、でも新しい作品を観ているような不思議な感覚でした。美しい現象が目の前にありました。手法はモノタイプ。油絵の具とホワイトガソリンを用いて起きた現象を写し取るという版画の一種で、なみさんが長年繰り返してきた技法です。

tokiori企画十六『dia-logos』
tokiori企画十六『dia-logos』使った色と、版になったアクリル板 現象の痕跡がとてもきれいです

tokiori企画十六『dia-logos』
入り口を入ってすぐの壁に配置した100号の大きなキャンバスの前に吊るされた4層の青く着色されたオーガンジー。外からの風と光を受けてまるで生命を受けたかのようでした。その現象をゆっくり眺めていただけるように、キャンバスに向かい合うようにベンチを置きました。

tokiori企画十六『dia-logos』
◯◯みたいに見えてきた、動く色の濃淡が水面に見える、自分の呼吸と呼応しているように感じる、などたくさんの感想を共有していただきました。層になったことで生まれた奥行きは、目をカメラのようにしてどこにピントを合わせるかでまったく別の絵が見えてきます。

絵を観ている感覚はあるけれど、光や風といった要素が加わりより多くの情報が混じり合います。観る人によってずいぶんと見え方が変わり、それらを共有することで生まれるコミュニケーションもまた絵の楽しみ方を広げてくれることを実感しました。ひとつの作品を通してその場に居合わせる人とつくる時間は、視野を広げ想像力を耕してくれる。個人的にも目の前に起きていることに対峙する、豊かで純粋な時間を過ごさせていただきました。

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』
tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

インスタレーションと一緒に展示した色鉛筆のドローイングは、こちらもなみさんが長年続けている細かい線の繰り返しで構成された作品です。無心になって手が動くままに色を選び線を引く。出来上がった形はとてもユニークで、使った色の名前が添えられて絵の一部になっているものまた愛らしく、実際に使っている150色の色鉛筆も展示していただきました。付けられたタイトルも独特で、こちらもいろいろな感想や妄想が飛び交いました。

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』
展示にいたるまでの過程をはじめ、過去のインスタレーションや寄稿文、言葉と写真で綴られたポートフォリオを拝見して、なみさんがジャンルを問わず表現し続けているひとつひとつのことはすべてどこかで繋がっていて、でもその世界は私の想像には及ばない深さがあるように感じました。

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』
今回のインスタレーションは、なみさんにとって制作の分岐点となる作品になったとおっしゃっていました。これからどんな方向に進んでいくのか、この企画展がきっかけになれたことをとても嬉しく思います。

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画十六『dia-logos』

県外から足を運んでくださったなみさんのご友人をはじめ、会期中に足を運んでくださったみなさま、佳き時間を一緒につくっていただきありがとうございました。

tokiori企画十六『dia-logos』

tokiori企画 十六 『dia-logos』

tokiori企画 十六『dia-logos』 tokiori企画 十六『dia-logos』

 

tokiori企画十六

美術家 ごとう なみ 個展
『dia-logos』

【会期】
2026.5/29fri.~6/7sun.

【時間】
11:00~17:00

【作家在廊日】
5/29、6/5(13:00-16:30)/ 5/31、6/6、6/7(終日)

……

一枚に見える絵は、何層もの色の重なりから生まれている。

重なる色を層に分け、可視化することで生まれた現象は
観る人の経験と記憶、変化する光や距離と交わり
あたらしい現象として現れる。

計算の中の偶然、論理の中に潜む感覚的なひらめきから
生まれる作風は、観る人の想像力を豊かにめぐらせます。

……

『dia-logos』は、ギリシャ語で「dia(〜を通して)」+「logos(言葉・意味)」。人々のあいだを通り抜ける「意味の共有」や「真実の相互交換」を示す言葉です。

今回の展示では、油絵の工程を層に分け、色の重なりを空間の中にひらきます。
重なり合う色のレイヤーが風に揺れ変化する現象や、色の隙間を歩きながら見える新しい視点。絵の見方にとどまらず、展示空間に起こるさまざまな現象を体感していただけたらと思います。
インスタレーションとともに、色鉛筆の線の重なりが美しい軽やかなドローイングもご覧いただけます。

入り口のハニーサックルが満開になるこの季節。
扉を開けて、気持ちの良い風とともに皆さまのお越しをお待ちしております。

tokiori企画 十五『草の縁(ゆかり)』を終えて

企画展を終えて約3週間。
作品のお渡しをほぼ終えて、写真を見返しながらこの記録を書いています。

改めて、足を運んでくださったみなさま、作品を手に取ってくださったみなさま
本当にありがとうございました。

いつもはお声がけした方と一緒にtokiori企画をつくる立場の私が、思い立って自分の作品を展示しよう決めたのが今年の7月頃。ここ何年かの間に積み重ねてきた好きなことを形にしてみたいと思ったのがきっかけでした。形にしたら、やっぱり見てもらいたい。というより、見てもらうという目標がないと形にできそうにない、と言う方が正しいかもしれません。初めての作品展にわくわくする気持ちと同時に不安な気持ちも半分抱えながら、決断しました。

点在していた好きなものを集めて、自分の表現の形として具現化することは想像していたよりも難しく、頭の中は忙しいのに、手が全然動かないこともありました。初めて手に取った素材や挑戦した手法、制作過程においてさまざまな実験を繰り返す中で点と点がつながり始め、この体験は、改めて学びを深めたいことや表現することについて考えるいい時間になったように思います。


今回すべての作品をFLATFILE主宰のモリヤさんに額装していただきました。モリヤさんがこれまでに集めていたアンティークのフレーム、廃材や古い建具などをリメイクして、作品に合ったものを選んでくださいました。フレームの素材や風合い、余白の取り方に至るまで、額装を含めてひとつの作品になることを改めて実感しています。

立体的な作品は、影も作品の一部として。照明の当たり方や時間によって趣が変わるのがおもしろい。

tokiori企画十五『草の縁(ゆかり)』

押葉、カリグラフィー、写真、線画など、それぞれが持つ私の中の共通点を結び合わせた今回の企画展は、今の自分を確かめるような時間でもありました。まだまだ学び途中ではありますが、自分の「好きな世界」を見てもらうことの緊張感や制作過程で感じたことは、とても貴重な体験として刻まれました。

会期中にかけていただいた言葉やメッセージ、芳名帳に残していただいたひとことが本当にあたたかく、感謝の気持ちでいっぱいです。また、作品制作、展示に際しお力添えをいただいたみなさまにも心より感謝申し上げます。

企画展の様子は、写真家の宮崎純一さんに撮影していただきました。
展示の空気感を汲み取っていただき、写真を見返しながら昨日のことのように感じています。
一顆とりり(instagram)
https://www.ikka-riri.com/

tokiori企画j十五『草の縁(ゆかり)』
和紙に印刷して、切って貼ってを繰り返して作った長ーい蛇腹の写真集(広げたらたぶん全長7mくらい!)。重なった紙の透け感と和紙の質感が冬の風景とよく合って、作業中に撮った好きな一枚。

tokiori企画 十五『草の縁(ゆかり)』

tokiori企画十五『草の縁(ゆかり)』

 

tokiori企画 十五
『草の縁(ゆかり)』
Mai Hondo hand works all framed by Koji Moriya

【会期】
2025.11/28fri 〜12/7sun

【時間】
11.28 fri  13:00〜19:00
会期中無休  11:00〜17:00

…..

『草の縁』は、
「ひとつのものや出来事をきっかけに
それにつながる別のものにも情愛を感じること」
「何らかの縁でつながるもの」
を表す言葉だそうです。

この言葉のように
これまでの経験やご縁
興味から生まれた点と点を結び
自分なりの表現のかたちを模索した
初めての作品展です。

仕事の傍ら続けているカリグラフィーと
自然や植物に共通する美しい曲線や偶然性を
植物標本や押葉、線画、写真に収めました。

それぞれに装いの異なる額装も作品の一部として
お楽しみいただけますと幸いです。

…..

【Profile】

本藤麻以
グラフィックデザイナー/tokiori主宰
紙媒体の仕事を中心に、事務所併設のちいさなギャラリーで企画展の企画運営。
仕事の傍ら学びを深めているカリグラフィーや、植物からインスピレーションを受けた作品を制作する。
@maihondo

モリヤコウジ
フレームショップ『FLATFILE』主宰
2015年より「FLATFILE SLASH」(長野市小鍋)を拠点に
オーダーメイドによるフレームの制作や長野の作家を中心に展覧会を企画。
@koji_flatfile.moriya

…..

『un bouquet de l’été』を終えて

料理家Hikaruさん(@hikhaboucca)とご一緒する3回目の会は、はじめての夏の会。

夏前からHikaruさんと会の想像を膨らませ、当日は室内に光や土や風、夏の畑の様子が感じられたり、テーブルを囲んで木陰で過ごしているような雰囲気を楽しんでいただけたらいいねとお話しを重ねてきました。

そして迎えた当日、2日間、各日6名様をお迎えしました。
暑い中足をお運びいただきありがとうございました。

un bouquet de l'été

un bouquet de l'été

ミント水をいただきながら、会ははじまりました。

un bouquet de l'été

今回の胡瓜は信濃町にあるりんもく舎さん(http://rinmoku.com/)のもの。5月に畑にお伺いしたのですが、畑の土がふかふかなことに驚きました。お話しを聞くと、農薬や化学肥料を使ってコントロールせず、草や虫、太陽など自然の力でできた土壌とのこと。

un bouquet de l'été
りんもく舎さんの畑

自然の力に委ねた純粋な土壌で育った胡瓜だからこそなのか、味が濃く食感もしっかりとしていました。今回は珍しい薄い緑色の胡瓜も。味は通常の胡瓜より少しすっきりと辛味を感じます。広げた時の視覚も楽しく、お好みで混ぜてパンに挟んでいただきました。ちなみに、ストレスなく育った胡瓜はまっすぐなんだそう。

un bouquet de l'été

今回使うパンは、Hikaruさんが朝焼き上げてくださったプルーンを練りこんだほんのり甘いパン。これがまた美味しいのです。

un bouquet de l'été

薄くスライスしたパンにマヨネーズを塗り胡瓜を丁寧に少し重なるように並べて塩を。その上にディルを広げ胡椒も少々。

みなさんがディルをちぎり始めると、いい香り!爽やかな香りに包まれました。

サンドウィッチに重石をして待つ間、シャルトリューズの時間です。
シャルトリューズは、フランスの修道院で1600年代ごろから秘伝のレシピで作られている薬草酒で、『ヴェール(緑)』と『ジョーヌ(黄)』があります。今回、このシャルトリューズに着想を得て、Hikaruさんがオリジナルレシピでノンアルコールのシャルトリューズ”Hikaru”を作ってくださいました。緑と黄色を足した深い色。

un bouquet de l'été

まずはそのままの香りと味をたのしみます。とろみのあるシロップは口の中にふわっと広がり、しばらくの間余韻に浸れるほど深く。

un bouquet de l'été

その後、レモンを絞り発泡水で割ってカクテルに。鼻先で感じるレモンの酸味も爽やかで、体の中を涼やかな風が巡っていくようでした。ハーブクラッカーとオリーブを添えて。

Hikaruさんからシャルトリューズのお話しを聞いた時、この会全体のつながりをよりはっきりとイメージすることができました。緑と黄色、夏には胡瓜も緑の葉を広げ黄色い花を咲かせます。太陽の下に広がる畑の景色が目の前にありました。一方で、これが修道院で数人の修道士のみが知る秘伝のレシピで作られ、ひんやりとした貯蔵庫に静かに眠る薬草酒を想像した時の重厚感。夏のエネルギーに満ちた時間から、夏の終わりに差し掛かる頃、少し疲れた体を癒してくれるような時間へ。

un bouquet de l'été
サンドウィッチとかぼちゃのクリームスープをいただきながら、りんもく舎さんの畑のことやシャルトリューズのお話しをしたりして過ごしました。胡瓜のシャキシャキとした音が響き、みなさん大切そうにひとくちを味わっていらっしゃいました。もう終わってしまう…と名残惜しそう。

最後はほのかにハーブの香りをまとったフランと、ラプサンスーチョンという松の葉の煙で燻したお茶でしめくくり。

はじまりから終わりまで、爽やかな香りと深い味わいに満ちた時間となりました。

un bouquet de l'été

会の余韻を愉しんでいただけるようにと、シャルトリューズ”Hikaru”を小さな瓶に詰めてお土産に。ラベルは修道院をイメージして、手書きで文字を書き、ロウ引きして作りました。

テーブルの上に置かれた小さな本もまた、今回の会のイメージに合わせて手作りしたもの。フライヤーで使った半透明の紙が、光にかざしてみると写真に透明感が出て綺麗だったので、写真や映画のスライドみたいになってみなさまの記憶にとどめていただけたらと。

会場の様子も少し。

un bouquet de l'été
ディルのタネとドライハーブ

un bouquet de l'été

un bouquet de l'été
りんもく舎さんの畑の写真を展示しました
un bouquet de l'été
会場は外の景色からの続く、夏の木陰をイメージして

un bouquet de l'été

シンプルな胡瓜のサンドウィッチも、丁寧にひとてまかければ作るのも楽しく、見た目も美しく。きっと誰かに作りたくなるサンドウィッチのひとつになります。会のあと、ご参加くださった方がさっそく作っていらっしゃるのを拝見してとても嬉しくなりました。

ご参加いただいたみなさま、ここでのご縁をありがとうございました。そして、今回ご参加が叶わなかったみなさまへ、会の様子をうまくお伝えできていればと願いながら、今回の会の記録でした。

今回も、写真はズズサウルスの木下さんに撮っていただきました。
いつもありがとうございます!

tokiori企画 十四『un bouquet de l’été』

un bouquet de l'été

 

un bouquet de l’été

2023年 8月12日(土)・13日(日)
14:30-16:30

料理家Hikaruさんがつくる胡瓜のサンドウィッチ。
瑞々しくて香り豊か、記憶に残る味のひみつを知りたくて
夏の会をリクエストしました。

夏が始まる前にHikaruさんと訪れたりんもく舎さんの畑は
自然の姿を残した大地が広がり、土はやわらかく、
近づく収穫の風景に想像を巡らせました。

大地と太陽の恵みをたっぷり吸収して育てられた胡瓜とハーブ、
麦香る芳ばしいパン、素材を調えるところから始まるサンドウィッチ。
方法を辿ればきっと今度は誰かにつくりたくなる。

そして、古くから修道院で伝えられたフランスの薬草酒
“シャルトリューズ”からの着想を得て
Hikaruさんがオリジナルのシロップを仕込み
会ではノンアルコールのお飲み物をご用意いたします。
テーブルに広がる夏色の風景を愉しみながら、
数々のハーブの香りと力がからだの中を穏やかに巡ります。

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今回ご一緒させていただくきっかけとなったのは「Hikaruさんの胡瓜のサンドウィッチの作り方を知りたい!(食べたい!)」というリクエストからでした。

そこから少しずつ夏の会のイメージを膨らませ、来てくださるみなさまと過ごす時間をあれこれ想像しながらHikaruさんとお話を重ねていきました。
素材選びからはじまる旬を味わいながら、テーブルを囲んで過ごす時間や語らい、そこに流れる緩やかな空気感に、夏の少し疲れた体をゆだねられるような、そんなイメージをしながら準備を進めています。

un bouquet de l’été – 夏のブーケ

美しいブーケを受け取った時のように、
ここで過ごす時間と体験が、心の深いところに届きますように。

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un bouquet de l’été — 夏のブーケ

2023年 8月12日(土)・13日(日)
14:30-16:30

席 数:各会6席
参加費:¥7,000(税込)
持ち物:エプロン、ハンカチ、筆記用具
ご予約:※両日満席となりました

ご希望日、人数、参加する方のお名前、代表者様のご連絡先、アレルギーの有無をご記入の上送信してください。先着順の受付となります。SNSのメッセージやDMでのご予約は受け付けておりませんのでご了承くださいませ。

※お申し込み後のキャンセルはできませんが、当日やむおえず参加できなくなってしまった場合は、サンドウィッチのレシピとおみやげを後日お渡しいたします。

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これまでにHikaruさんとご一緒した会の記録はこちらをご覧ください。

『Fall in herb, Fall in spice』(2019.11)
『Maison de Biscuit – notes of winter table』(2021.12)

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『森の旋律』を終えて

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤さんの作品と出会ってから約3年。tokioriでの企画展が実現しました。
初めて見た時に印象に残った曲線の美しさや縁の薄さ、“器”でありながら作品自体が放つ独特な佇まいに惹かれてお声がけしました。

安藤萌 個展『森の旋律』

さまざまな樹種、ウメやリンゴ、カキなどといった器にはめずらしい木を使ったり、通常ならば避けられる木の節や枝分かれした部分の扱いにくい部位でさえも活かす安藤さんの作風に興味を持ってくださった方がたくさんいらっしゃいました。

「この器は木の状態の時はこの向きで生えていて…」とか、「ここの色が違うのは枝分かれしていた部分で…」とか、「木目がこうなっているのはこういう向きで削り出していったから…」とか、安藤さんの製作過程のお話もとても興味深いものばかり。形が完成してしまうと見えない部分の話を聞けるのは、作家さんが在廊してくださるからこそのたのしみです。

安藤萌 個展『森の旋律』

生木の状態で形を作り、そこからの乾燥過程で自然にうまれる歪みを活かすという、まさに木の個性が宿る一点もの。同じようなサイズでも見比べてみると、波打つような曲線も木目も横から見たフォルムも違う。何度も何度も見比べて時間をかけて選んでくださる姿に、私も心の底から「わかるわかる!」と何度も呟きました。

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

うるしの器も手に取る方が多く、お抹茶用に花器にと、想像を巡らせながら選んでいかれました。

安藤萌 個展『森の旋律』

そして、器よりもさらに薄く削られたランプシェードからは、木目の表情が生き生きと映し出されます。

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

新作のひとつだった木の壁掛け。1点しかなかったのですが、存在感がありました。

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』

そして、外からひと続きになるように設えた石(コンクリートの一部)の山。自然に溶け込むような一角には野性味を残した作品を。安藤さん曰く、こういう作品は、木自体との出会いと自分の中の想像力が掻き立てられた時にしかうまれてこないそう。一点一点の力強さを感じました。こちらは鉢カバーやオブジェにと用途はさまざま。

安藤萌 個展『森の旋律』

実用的なものからオブジェまで、それを使う人の想像力や感性によってどんどんイメージが膨らみます。中に何かを入れずとも、そのフォルム自体をたのしむことができるのも魅力のひとつ。自然の力に委ねながらうまれてきた作品だからこそ、人を癒し穏やかな気持ちにさせてくれる力があるような気がします。森の中の景色を見ている感覚に近いでしょうか。

寒い中、tokioriに足を運んでいただいたみなさま、また、気にかけてくださったみなさまありがとうございました。
安藤さんの工房兼ギャラリーは上田別所温泉近くにあります。これから冬季休業に入るようですが、あたたかくなったらぜひ訪ねてみてください。
https://www.morino-utsuwaya.com/

安藤萌 個展『森の旋律』

安藤萌 個展『森の旋律』
今回の展示で石の展示台をつくるにあたり、善光寺門前 Gallery MAZEKOZEを企画運営するRIKI-TRIVAL(リキトライバル)の小池さんにご協力いただきました。「石とか自然に近い素材を展示に使いたいのですが…」という私のざっくりとしたイメージにもかかわらず、親身に相談に乗っていただきました。安藤さんがつくる自然の姿に近い味わいを残した力強い作品と調和し、展示の可能性を広げてくださいました。本当にありがとうございます!

その他、什器の一部は古道具 そらしまさんでお借りしました。

写真は毎度ながら、ズズサウルスの木下さんにもご協力いただいています。

今回も、たくさんの方にお力添えいただき感謝いたします。

tokiori企画 十三『森の旋律』

安藤萌『森の旋律』

安藤 萌
『森の旋律』

2022/12/17sat.-26mon. 会期中無休
13:00-18:00 (21日は20:00まで)
作家在廊日: 17(土)・18(日)・21(水)・22(木)・25(日)・26(月)

………….

木の記憶が宿る美しい曲線

木の声を聞き、木の呼吸に委ねて完成する形状は

森の中で生きてきた歳月を見ているかのよう

大きな壺やランプシェード

たっぷりとしたつくりの鉢や平皿

大小さまざまに並びます

うつわとしての用途を超えた

『森の旋律』をおたのしみください

………….

安藤さんとの出会いは3年ほど前のこと。別所温泉を訪ねた際に立ち寄ったカフェで偶然手にしたポストカードがきっかけでした。工房兼ギャラリーを訪ねてみると、日本家屋の一軒家の中にずらりと並んだ木の器たち。どれも絶妙な曲線のある形状で、ずっと眺めていてしまう癒しに似た感覚がありました。お話しを聞くと、その曲線は木が乾燥する時におこす自然の歪みとのこと。それぞれの木の個性を見ているようで、ずいぶんと長居をしてしまいました。

『森の旋律』ー 何度か打ち合わせを重ね、作品を眺めながら安藤さんの言葉を聞いているうちに浮かんできた情景です。ゆるやかに不規則な曲線を纏う姿を眺めていると、深い森の静けさの中で生きてきた木の声が聞こえてくるよう。近隣の森から切り倒された木と向かい合い、対話しながら生み出された新たな命。tokioriで流れる森の旋律を、どうぞおたのしみに。

………….

作家プロフィール

安藤 萌(あんどうもゆる)
2008年フィンランドの「Liminka Art School」にて芸術、2009年~2012年「Lahti University」にて家具とプロダクトデザインを学ぶ。その後家具メーカーで設計と製造に携わり、福祉事業所での木工指導員を経て長野県上田市野倉に工房を開設。​​地元で切り倒された丸太から木の器を製作している。乾燥時におこる歪みや木の節や欠けを、その個性として美しく活かすことを目指す。

『10日間の額縁屋 Rendez-vous』を終えて

Rendezvous

通常の展示とは少々異なる「店舗」としてみなさまをお迎えする企画。どんな展開になるのか始まる前から期待が高まりました。

来店された方々の手には、今まで眠っていた絵や写真、置き場所に悩んでいたオブジェやアートピース、お皿まで、サイズも重さも素材も本当にさまざまなものがありました。その度、モリヤさんが作品に合わせてフィッティング。余白はあった方がいいか、縁の色は?細さは?深さは?マットはいる?…合わせていくと、作品の見え方がどんどん変わり自分で選ぶ時には想像しなかったような景色が見えてきて。シンプルなスタイルの額縁に秘められた奥深さを垣間見た気がします。

Rendezvous

Rendezvous

Rendezvous

Rendezvous

個人的に印象的だったエピソードをひとつ。自分で描いた絵を初めて額装した女の子がいました。絵が大好き、スケッチブックに描きためたたくさんある中から1枚切り離して、モリヤさんのアドバイスのもとそのままの状態で額装。スケッチブックの中にあってもキラキラして見えたけど、額装したこの1枚、彼女にとってこの初めての感覚はきっと記憶に残る、その瞬間に立ち会えたような気がして心密かに嬉しくなりました。大事そうに抱えて帰る姿もとても印象的でした。

Rendezvous

空間に設えた作業場は、実際にFLATFILEから持ち込まれたパーツを組み立ててモリヤさん自ら設営。あっという間に出来上がって驚きました。この作業スペースのみならず、tokiori全体が日を追うごとにモリヤさん色に染まり、10日目が終了した次の日も出勤してくるのではないかと思ってしまうほど。

Rendezvous

Rendezvous

Rendezvous

限られた日数の中、『Rendez-vous』にご来店くださったみなさま、気にかけてくださったみなさま、ありがとうございました!初日から賑やかなスタートとなり、壁一面を埋め尽くした100以上あった額縁も最終日には3分の1ほどを残すのみに。

多くの作家の額装を手がけているモリヤさん。自身も画家志望だったという背景もあり、アートに対する興味や知識、今まで目にしてきた数々の作品で培われた審美眼から発せられる言葉の信頼感、そして穏やかに導いてくれるその人柄が、多くの人が慕って額装を依頼する理由のひとつだと思います。
普段は長野市小鍋に工房を構えています。額装したいものが出てきたら、ぜひ、訪ねてみてください。

Rendezvous

FLATFILE
長野県長野市小鍋11−17
https://www.instagram.com/flatfile_/

tokiori企画 十二『10日間の額縁屋 Rendez-vous』

toliori企画 十二  10日間の額縁屋『Rendez-vous』

10日間の額縁屋
『Rendez-vous』

2022.10.18tue.-29 sat. (期間中の月曜・日曜はお休みです)
13:00 -17:00 (金曜日は21:00までオープン)
………….

100の額縁。
FLATFILE モリヤさんがこの日のために作り続けた額縁が、
tokioriを埋め尽くします。
10日間だけ開く特別な店『Rendez-vous』。
約束された出会いが待っているかもしれません。

………….

FLATFILEモリヤさんとの出会いは、さかのぼること20年近く前、ニューヨークでのこと。話が長くなるのでここでは端折りますが(興味のある方がいたら会期中にお話しましょう!)、稀有なご縁をいただきました。いつかご一緒させていただく機会があればと待ち望んでいたところ、この秋、ついに実現します。

約1年前から、少しずつ準備を進めていたこの企画。普段のオーダーメイドスタイルから一変、100を超える額縁だけがtokioriに並びます。厚みやサイズ、風合いが異なる額縁をじっくり眺めていただきたい。

『Rendez-vous』(ランデヴー)とは、“待ち合わせ” のこと。
壁一面に並ぶ額縁の中から、心惹かれる出会いを見つけていただけたら幸いです。

※額装したい絵やイラスト、オブジェなどがあればご持参ください。モリヤさんの在廊日には、その場で額装していただくことができます。(全日在廊予定)

………….

作家プロフィール

モリヤ コウジ
フレームショップ『FLATFILE』主宰。
2010年より『アートスペースFLATFILE」ギャラリー/フレーム
ショップ(長野市桜枝町)を開く。オーダーメイドによるフレーム
の制作、長野の作家を中心に展覧会を企画。2015年より
「FLATFILE SLASH」(長野市小鍋)に拠点を移す。

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